心臓病

心不全
症状
労作時の息切れ、呼吸困難、体のむくみ、体重増加、動悸などがあります。
『心不全とは、心臓が悪いために、息切れやむくみが起こり、だんだん悪くなり、生命を縮める病気です』
と日本循環器学会・日本心不全学会で定義されています。
*専門的には『心臓の構造・機能的な異常により、うっ血や心内圧上昇、および/あるいは心拍出量低下や組織低灌流をきたし、呼吸困難、浮腫、倦怠感などの症状や運動耐容能低下を呈する症候群』と定義されています。
原因
心臓自体に問題がある場合(狭心症・心筋梗塞、心臓弁膜症、心筋症、心筋炎、先天性心疾患など)と、心臓へ間接的にダメージを与える問題がある場合(高血圧、糖尿病、貧血、甲状腺機能亢進症、腎機能低下、薬剤の副作用やアルコールの長期過剰摂取、加齢など)があります。
治療
慢性心不全の場合は、心不全の原因となっている病気の治療を第一に考えて治療する必要があります。そのうえで慢性心不全の症状を改善するように適切な薬剤を選んで投与します。主に使用する薬としては利尿剤(むくみに対応)、血圧のコントロールを助けるための薬剤(レニン・アンジオテンシン・アルドステロン系阻害薬、ミネラルコルチコイド受容体拮抗薬、β受容体遮断薬など)を中心に投薬コントロールを行います。急性心不全の場合は肺に急激に水がたまることにより十分な呼吸が出来なくなり、さらに心臓のポンプ機能の低下に伴って全身に必要な酸素の供給が出来なくなります。その場合は点滴治療、酸素療法が必要になる場合もあります。点滴治療、酸素治療、入院が必要と判断した場合は近隣の病院へ紹介しています。
狭心症、心筋梗塞(虚血性心疾患)
心臓の動きに異常をきたしたり、心臓の筋肉が壊死したりする病気です。突然死の原因として最も多い病気です。狭心症・心筋梗塞が原因で心不全となる場合もあります。
症状
胸の圧迫感、締め付け感、胸の痛み、背中の痛み、腕やあごの痛み(放散痛)などがあります。症状は労作時に限らず安静時に感じることもあります。
原因
狭心症・心筋梗塞は心臓を動かすために必要な栄養を送る血管(冠状動脈)が狭窄や閉塞を起こし発症します。
治療
原因や重症度、発作頻度などによって薬物療法、カテーテル治療(冠動脈形成術)、手術(冠動脈バイパス手術)が選ばれます。当院では薬物療法での治療を行っています。
不整脈
【脈が速くなるタイプ】
脈が速いこと(心拍数100回/分以上)を頻脈といいます。安静時に正常な心臓は1分間に60回~80回程度の拍動をしていますが、1分間に100回以上の拍動が頻繁に起こる場合、発作性心房細動、発作性上室性頻拍、心室頻拍の可能性があります。発作性心房細動の場合、心臓の動きが正しいポンプ機能を果たしておらず、心不全や脳梗塞などの危険な病態につながることがあります。(心臓が正しくポンプ機能を果たしていないと、心臓の中にうっ滞した血液の中で血液が凝固してしまい、血栓を作ることがあります。)心室頻拍の場合、心臓が十分に血液を送り出せなくなり、放置すると命に関わる危険な状態(心室細動や心停止) につながることもあるため、適切な治療が必要です。
症状
動悸、息切れ、めまい、意識消失などがあります。
原因
虚血性心疾患、心臓弁膜症、心不全、先天性心疾患、高血圧症、貧血、甲状腺機能亢進症、糖尿病、加齢、ストレス、疲労、睡眠不足、飲酒、喫煙、カフェインの過剰摂取、薬剤の副作用などがあります
治療
薬物療法が第一選択となり、原因や症状に合わせて投薬を行います(抗凝固薬、βブロッカー、抗不整脈薬など)。軽度の頻脈である場合は生活習慣の改善により症状が軽減する場合もあります。検査によりカテーテル治療(カテーテルアブレーション術)、植え込み型除細動器植え込みの対象である場合は専門の医療機関をご紹介しています。
カテーテルアブレーション
不整脈を引き起こす異常な電気信号を発している部位に対して、カテーテルを使用して治療します。異常な電気信号の発生自体を止め、正常なリズムに戻すことが出来ます。
植え込み型除細動器(ICD:Implantable Cardioverter Defibrillator)
命に関わる重い不整脈を防ぐための医療機器 です。特に、心室頻拍や心室細動 などの危険な不整脈が起きたときに、自動で心臓を正常なリズムに戻してくれます。ペースメーカーと似た小型の機器を胸の皮膚の下に植え込む ことで、常に心臓のリズムを監視し、異常があれば電気ショックを与えて不整脈を止めます。
【脈が遅くなるタイプ】
脈が遅いこと(心拍数60回/分未満)を徐脈といいます。徐脈になると意識消失したり、ふらついて転倒したりすることがあります。また長期的に症状が続くと心不全に至ることもあります。
【洞不全症候群】
心臓の筋肉は電気信号で動いています。心臓の上の方(心房)にある洞結節という部位から、規則正しく電気が発生し、心臓の下の方向(心室)に続く電気の通り道に沿って電気信号は送られます。心臓の筋肉は電気信号を受け取り、収縮することで全身に血液を送るポンプとしての機能を果たしています。洞不全症候群の場合、洞結節の細胞に異常が生じて電気の発生回数が少なくなったり、発生できなくなったりするため、心拍数が遅くなります。
【房室ブロック】
洞結節で発生した電気が心房から心室へ伝えられる際、房室結節と呼ばれる部位を通ります。房室結節では電気の流れを調節して電気信号を心室に受け渡す役割がありますが、細胞に異常が生じ、心室への収縮命令が伝わらなくなることがあります。そのため心拍数が遅くなります。房室ブロックの症状にはいくつかの段階に分けられます。
- 第1度:電気が伝わるスピードが遅くなる
- 第2度:時々電気が途切れる
- 第3度:完全に電気が伝わらない
第3度の状態を完全房室ブロックといいます。
第1度の場合はほぼ無症状で治療になることもありません。第2度の房室ブロックでも自覚症状(ふらつき、息切れや疲れやすさ、動悸など)が無い場合治療にならないことがあります。しかし、第3度の房室ブロックの場合は心室が自家発電しているような状態となり、多くの場合ふらつきや失神などの症状を起こしたり、心不全の状態となったりします。重症の方では非常に脈拍数が少なくなったり、心停止したりすることもあります。治療が必要な第2、3度房室ブロック場合、ペースメーカー治療になります。
症状
めまい、息切れ、意識消失、労作時の息切れなどがあります。高齢の方の中には日ごろの運動量が少なく、また徐脈の状態に身体が慣れてしまい、自覚症状の訴えが無い場合もあります。
原因
加齢(もっとも多い原因)、虚血性心疾患、心筋症、心筋炎、薬剤性、自律神経性、高カリウム血症、甲状腺機能低下症などがあります。
治療
ペースメーカー治療の適応は第2度、第3度の患者さんで、めまいやふらつき、心不全などの症状がある場合となります。ペースメーカー治療は一般的に左肩の血管から電極のついたリードを心臓内に挿入し、ペースメーカー本体につないだ後、本体を皮下に植え込みます。この電極で心臓の動きを感知して脈が遅い場合は本体から電気が流れて心臓を刺激し動かすという原理です。本体は縦横4-5cm、厚さ0.7-1.0cm、重さ約20-30グラム程度です。電池で作動しています。植え込み術を終えた後、電池の残量や動作について定期的にチェックが必要です。一般的に5-10年程度で本体の交換が必要です。また、植え込み型のペースメーカーの適応かどうか判断が難しい場合は体外式ペースメーカーと呼ばれる簡易式のペースメーカーを挿入し、経過観察する場合もあります。ペースメーカー治療が必要と考えられる場合は不整脈治療の専門医療機関をご紹介いたします。
・当院では、ペースメーカー植え込み術後の患者さんの定期的な機器のチェックなども実施しています。
心臓弁膜症
心臓には右心房、右心室、左心房、左心室の四つの部屋があり、順番に血液が流れています。それぞれの部屋の間にはドアのように働く『弁』があります。心臓弁膜症はこの『弁』の働きが正常でなくなることによって症状が引き起こされている状態です。弁は本来、血液が流れるときに開き、流れ終わったら閉じて血液が逆流しないように機能しています。何らかの原因で、弁の開きが悪くなっている場合、心臓弁膜症と診断されます。
症状
息切れ、胸痛、呼吸困難、動悸、心不全、不整脈、意識消失、倦怠感、健診時の心雑音。
原因
加齢、虚血性心疾患、高血圧症、外傷、先天的異常、感染症などがあります。
治療
薬物療法、カテーテル治療(TAVI)、開胸手術。
薬物療法
薬物を使用し、心臓にかかる負担を取り除きます。症状の緩和や、心不全悪化を予防する目的の場合もあります。使用する薬としては利尿薬、抗不整脈薬、アンジオテンシン変換酵素阻害薬、β遮断薬、抗凝固薬などです。ただし、薬物治療では弁自体の機態を回復させることはできません。弁自体が傷んで重症化した場合は薬で元に戻りません。その場合カテーテル治療、手術を行います。
カテーテル治療
TAVI(タビ)=経カテーテル大動脈弁植え込み術主に大動脈弁狭窄症の方に行う治療法です。太ももの付け根の血管から挿入する「経大腿アプローチ」、左胸の肋間を小さく切開し、心臓の先端(心尖部)から挿入する「経心尖アプローチ」などがあります。傷んだ弁の上に人工弁をかぶせるように植え込みます。
MitraClip(マイトラクリップ)=経皮的僧帽弁クリップ術
僧帽弁閉鎖不全症の方に行う治療です。カテーテルで心臓内の弁をクリップで挟んで、血液の逆流を減らします。カテーテル治療は胸を大きく切開する開胸術と違い、比較的体への負担が軽いので、高齢者や体力のない方、開胸術を受けることのできない方でも治療が可能です。
開胸手術
胸を開いて、一時的に心臓と肺の機能を代行する人工心肺装置を使用し、心臓を切開して弁の機能を回復させる『開心術』という方法を行います。弁を治す手術には、弁形成術と弁置換術の2種類があります。
心筋症
心筋症は心臓の筋肉の病気で、心臓のポンプ機能が障害されます。心筋症には拡張型心筋症、肥大型心筋症、拘束型心筋症、二次性心筋症(心アミロイドーシス、心サルコイドーシス)などあります。
症状
息切れ、呼吸困難、動悸、心不全症状、不整脈など心筋の障害や心機能低下に伴う症状が起こります。
原因
先天的な要因、ウイルス感染症、免疫反応などがあります。原因が不明な場合もあります。
治療
心筋症に伴い起こった心不全や不整脈に応じた治療が行われます。開心術が行われる場合もあります。
心臓病の検査
【院内で対応可能な検査】
心電図検査、携帯型心電図検査、ホルター心電図検査、運動負荷心電図検査、血液検査(TnT、NTpBNP:心筋梗塞、心不全の診断)、レントゲン検査、心臓超音波検査(心エコー)
【協力医療機関や専門医療機関へ紹介して行う検査】
CT検査(心臓CT検査)、MRI検査、心臓カテーテルなど






